冬をめぐる記憶


このごろ、本当に寒い。

ふだん、あまりエアコンを使わないけど、さすがに暖房をつけた。

暖房はいいけれど、すぐに乾燥してしまうので、

結局、弱々しいストーブに頼って日々を過ごしている。



こんなに寒いと、感情の温度もぐーんと下がる。

わたしは相変わらず誰かれ構わず風除けにしている。

冬は記憶が蘇る季節と、いつも思う。

思い出すというよりも思い出されるというべきかもしれない。

寒い冬の夜に孤独を感じるけれど、

不思議に寒いとき、あたたかい記憶がある。


舌がやけどしそうなホットココア。ほっかほっかの野菜スープ。

寒い朝のお布団の中。部屋の中のストーブの匂い。

のりっぺが編んでくれた帽子。


そういえば、昨夜の飲み会の席で、

のりっぺの肩によりかかったときも温かかった。

「人肌が恋しい」という表現は、実にうまいと思った。



あの時もそうだった。

寒い寒い夜に冷たい風をきって

風除けになってくれたある人のコートを、

後ろから両手でぎゅっとつかんだときのみちたりた気持ち。

駅までの道のり、夜は果てしなくひろがっていく。

澄んだ空気を吸いながら、星に願いをした。



あんなに寒かったから、

心が溶けそうなあたたかい記憶になるのかな。